キャリアスタートのきっかけ
2006年頃にピストバイクが流行り出し、世の中に自転車ブームが到来した。その少し前、デザインの仕事を一旦辞め、就職活動をしていた荒牧さんは、求人サイトでパールイズミの求人を目にした。当時まだ自転車は持っていなかったが、自転車があるライフスタイルに興味があったこと、カスタムオーダーというポジションが前提だったことから、技術的にもすぐに活躍、貢献できそうだと感じ、入社を決めた。それから15年間今の業務に従事している。さらに入社が決まってから半年後には自転車も購入し、自身もサイクルライフを楽しむようになった。
カスタムオーダーの業務とは
サイクリストにはビギナーからシリアスな選手まで幅広い層が所属する数多くのチームが存在し、それらのコミュニティによってサイクルライフが充実している人も多いのだはないだろうか。そして、チームの面構えとなるのがチームジャージ。趣味嗜好が凝らされたオリジナルのものを作りたいというニーズに応えるべく、窓口になっているのがカスタムオーダーチームだ。大体はこういうデザインにしたいという方向性が決まっている案件が多いものの、ゼロからデザインを依頼されることもあれば、既存のデザインからマイナーチェンジしたいというオーダーもあるため、このチームにはデザインを描けるメンバーが揃っている。
ゼロベースからの提案の場合は、幾つか参考となるイメージ素材や資料を提示しながらディスカッションを繰り返し、最終的な提案へと繋げる手法を取っている。どちらにせよ、実際に着用する人たちの意図を汲みながら提案するため仕上がりの満足度が高く、ジャージのクオリティの高さと掛け合わされてリピーターに繋がることが多いのが特徴。
デザイナーとしてのこだわり
実は、立体的な衣服と平面的なデザインを合致させることにはテクニックがいる。自由にデザインができるように見えて、想像通りにいかないことも少なくない。オーダーをしてくださる方々にそのイメージが乏しいのは当然であるが、大切なチームジャージのため妥協せずこだわって作りたいという強い思いがある。その気持ちに応え、ロジカルに理由を説明し、顧客が満足できる調整案を提案するのがデザイナーの腕の見せ所であり、醍醐味。そのためにも、日々のインプットは欠かさず、様々な提案ができるように多くの引き出しをストックしている。
また、どのプロダクトでオリジナル製品を作るのかという相談に乗ることも多いという。その場合は、出場するレースの種類や日常的に使用するシーン、コミュニティの雰囲気など多くの視点からヒアリングをし、提案する。快適に楽しくライドを楽しんでほしいという思いに加え、チームジャージを着用して仲間と過ごす時間全てが豊かになってほしいという願いがゆえ。納品した後のその先の景色までも想像しながらデザインに取り組んでいる。
仕事のやりがい
カスタムオーダーチームがデザインしたものを顧客やパールイズミメンバーが着用しているのを見て「あれと同じものがほしい」というお声を多数いただいている。デザイナー冥利に尽きるありがたいお言葉であるが、どんな人にもそれぞれのニーズにあったデザイン提案をし、満足度を高めたいというのが根源にある。これからもサイクル業界におけるオーダー文化は継続していくであろう中で、ジャージの品質に対する信頼性とは別に、内製化されたサービスをクオリティの高いものとして提供していく。それがブランド自体の価値が向上するのではないかと考えている。